甘い香りに誘われて【続編 Ⅲ 完結しました】
「そ、そうかな?松田くんの思い過ごしじゃないの?」

「ううん。おかしい、不自然」

ピシャリと言う。

(鋭いな〜 さすが法人営業部のホープ)

取り繕っても仕方ないので、

「宮澤課長は他の部署の人で役務者でしょ?あまり親しくなり過ぎるのは良くないかなって思って」

「仕事を離れたら、ただの男と女だよ?
それ気にするとこ?」

「私のこと…宮澤さんの彼女に誤解されたら申し訳ないから…」

(やだ…また思い出しちゃった)

「…んだよっ、あの人!彼女がいるのに佐久間にちょっかい出してたのか⁉︎」

「彼女はいないって言ってたけど、車に残り香が…」

ガバッ…視界が暗くなる。

シトラスの香り…へっ⁈ 何⁇

頭に大きな手が添えられ、大樹の肩の辺りに引き寄せられてる。

ええええぇ‼︎

な、何⁉︎

「泣くな…」

へ?…私、泣いてるの?無意識だった
頬を涙が伝っていた。

「………」

「なあ、俺、佐久間が好きだ。
いつも頑張る佐久間が好きだよ。
けど、一番好きなのは無邪気に笑う笑顔の佐久間なんだ。

宮澤課長と付き合ってると思ってたから諦めようと思ったけど、そうじゃないなら、俺んとこ、来いよ。

俺は、佐久間を泣かせない」

頭に添えられた手の力を少し緩み、松田が上目遣いに微笑む。

「今日、晩ごはん食べに行こっ。
さっき食べた気にならなかったろ?」

「うん…」

「んじゃ、決まりな」





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