甘い香りに誘われて【続編 Ⅲ 完結しました】
ここが、会社の喫茶スペースということを忘れかけてた。

(会社で泣いたの…初めてだ)

パシッ!…頬を両手で叩き、気合いを入れる。

(私は仕事を頑張る!恋は…)

「しない…いや、してるか…」

一人つぶやく。

(まずは、午後を乗り切ろう)

広報室のある7階まで階段で下りる。

カツ、カツ、カツ…

7階フロアに足を踏み入れると、スマホを手に電話中の宮澤さんがいた。

キリッ…胸の奥が痛い。

私に気付くか分からないけど、そっと会釈して通り過ぎよう。

「お疲れ様です」

うつむき加減に小声で言い、電話中の宮澤さんの横を通り過ぎる。

グイッ…

ん⁉︎

右腕を宮澤さんにつかまれる。

びっくりして、宮澤さんを見る。

電話は終わったようだ。

「あの…?」

「………」

「宮澤課長…」

(…どうして?)

「法人営業部の松田と付き合ってるのか?」

「いいえ?松田くんは同期ですよ?
仲は良いですけど?」

「そうか…」

つかんだ私の右腕を見て、パッと手を離す。

「いきなり掴んでしまって、すまない」

コツ、コツ、コツ…

宮澤さんは、エレベーターの方へ去っていった。

「………」








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