甘い香りに誘われて【続編 Ⅲ 完結しました】
『やっと春が訪れたと思ったら、初の失恋だな』

矢神に散々からかわれた。

俺は何も話してないのに、俺と都の様子を見て察知したらしい。

グズグズし過ぎ、なぜ年末年始の絶好のチャンスを活かさなかったのか?とも言われた。

どうしたらいいか分からなかった。

小学校高学年で、背が伸び始めた頃から女にモテ始めた。

同級生の女子や年上の女性…告白され好みの容姿なら取りあえず付き合った。

それなりに好きだったが、自分から好きになったわけではないからか、長く続かなかった。

そんな俺が初めて自分から好きだと思ったのが、都だ。

初めて都を見かけたのは、入社式だ。

本社受付の生花の前で、何かつぶやきながら立っている女の子がいた。

それが佐久間 都だった。

どうやら、生けてある花のバランスが悪いらしい。
ササッと花を生け直すと、キョロキョロッと辺りを見回し、エレベーターホールの方へ小走りで走って行った。

その仕草が、可愛らしく印象に残った。

(へぇ〜、綺麗に直ってる)

エレベーターが7階で止まったことを目で確認する。

(総務部…秘書課か広報室だな)

その日から、都の姿を目だけで探している俺がいた。

27歳の初恋

今までの女に対してできてた振る舞いが都に対してはできない。

こんなことをしたら、嫌われるのではないかと心配になり、いつかの夜も彼女を抱きしめ、額に口付けるだけで精一杯だった。

あれ以上、一緒の空間にいたら、都を押し倒してしまいそうだった。
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