甘い香りに誘われて【続編 Ⅲ 完結しました】
カチ、カチ、カチ…

掛け時計の秒針の音が、やけに大きく聞こえる。

宮澤さんは、目を閉じて、ソファにもたれたきり動かない。

手は、しっかりと握られたままだ。

(ずっと忙しそうだもの。疲れてるんだよね…
もう少ししたら、起こしてあげよう)

「寝てないから」

突然、ムクリと起き上がり、ぐいっと私の手を引くから、宮澤さんの胸に飛び込んだ態勢になってしまい、慌てる。

「"もっとしてほしいと思いました"…か

それ、意味分かって言ってる?」

(失敗した⁉︎…あ、大胆な発言だったかも…うわあぁぁ!)

たぶん、私は真っ赤だ。

私を見つめていた宮澤さんの表情が柔らかくなり、静かに私に近付いた。

唇に柔らかな感触。

少し熱をもった宮澤さんの唇が、そっと何度も私の唇に触れる。

キュン…

私…宮澤さんにキスされてるんだ…。

嬉しくて、解放された左手を宮澤さんの胸にそっと置く。

ビクッ…宮澤さんが反応した。

「たんま…これ以上はヤバいな。

改めて、仕切り直したい。今週の土曜日は空いてる?」

「はい」

「じゃあ、土曜日は半日仕事があるこら14時頃に迎えに行く」

会議室を出ようとする私に、ちょっと待って、お化粧直してね…と爽やかな笑顔。
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