腹黒王子に秘密を握られました
買い物から帰って来ると、酔いつぶれたお父さんはもう寝てしまい、金子はお風呂に入っている最中だった。
「金子くんお風呂だから、莉央も一緒に入ってくれば?」
「はぁ!? 入るわけないでしょっ!?」
とんでもないことを言うお母さんに、唾が飛びそうな勢いで断固拒否する。
「あら、照れちゃって」
「照れてないし!」
ぷりぷり怒りながら、洗面所に向かう。
「金子さん、下着買ってきたので、置いておきます」
「あ、悪い。ありがとう」
くもりガラスの向こうから聞こえてきた声にドキッとする。
自分の実家で知り合いがお風呂に入ってるって、なんだかすごく不思議だ。
「酔っぱらってお風呂に入って大丈夫ですか? けっこう飲んでましたよね」
「あー、これくらいなら大丈夫。お父さん、酒強いなぁ。一緒に飲んでて楽しかった」
「そうですか? 無口でつまんないと思いますけど」
「木の話とか色々教えてもらった。勉強になったし、職人の心意気を聞けて嬉しかった」
二人でずっと飲んでるなと思っていたら、そんな話をしていたんだ。私はお父さんの仕事に興味なんてなくて、ちゃんと聞いたことなかったな。
「のぼせて溺れないでくださいね」
なんて憎まれ口を叩いて洗面所から出ようとすると、「莉央」と呼び止められた。