腹黒王子に秘密を握られました
「……はい?」
「今日、実家につれてきてくれて、ありがとう」
「なんですかそれ。勝手にお母さんと話をつけて、強引に来たくせに」
「まぁ、そうだけど」
「それに、お礼を言うならこっちですよ。父と母の前で恋人のフリをしてくれて、ありがとうございました」
私がそう言うと、少し黙り込んだあと、「ん」と短い返事が返ってきた。
このくもりガラスの向こうで、金子は今どんな表情をしているんだろう。
お風呂から上がった金子と入れ違いに今度は私がお風呂に入り、パジャマ代わりに実家に置いてあった高校時代のジャージを着て出てくると、
「あんたの部屋にお布団敷いておいたからね」
とお母さんに声をかけられた。
「私の部屋?」
「そう。金子さんもう部屋にいるわよ」
「ち、ちょっと……っ!!」
青ざめながら自分の部屋まで猛ダッシュする。
バターンッ!! と勢いよくドアを開くと、そこには私の部屋を物珍しそうに物色する金子がいた。
「なに勝手に部屋に入ってるんですかッ!!」
「お母さんの許可は取ったけど?」
「いくら親がいいって言ったって、乙女の部屋に勝手に入るなんてっ!!」
「これが乙女の部屋な」
私の言葉に金子は笑いをこらえる。