腹黒王子に秘密を握られました
視線の先には壁一面のアニメのポスターと、うずたかくつまれた、キャラクターグッズ。
クッションに埋もれた私のベッドと、その足元の狭い空間にかろうじて敷かれた来客用のお布団。
「これはお供え物かなにかか?」
「お供え物じゃなくて、祭壇です」
「祭壇……。確かにお母さんが狂気の沙汰と言った意味がわかるな」
「勝手に触ったらぶっとばしますよ。私が高校時代から大好きなアニメのキャラなんだから」
もう十年以上前に放送していたアニメだけど、今みてもやっぱり胸がときめく。
お母さんは処分しなさいと簡単に言うけれど、捨てられるわけがない。
今住んでいる東京とは違い、アニメショップも本屋もコンビニすらないこの田舎で、これだけグッズを集めるのに、どれだけ苦労したことか。
お小遣いをため、通販を駆使して集めた宝物たち。
私の青春の結晶だ。
部屋に置いてあるキャラクターのイラスト入りのクッションを持ち上げ頬ずりすると、思いきりため息をつかれた。
「俺が前にくじで当てたフィギュアにも、そうやって頬ずりしてんの?」
「……悪いですか?」
「別に悪くはないけど、複雑だな」
「すいませんね、気持ち悪くて」
開き直って踏ん反りかえる。
もう金子には情けないところばかり見られて、恥ずかしさもなくなってきた。