腹黒王子に秘密を握られました
 



「お邪魔しました」




翌朝玄関先で頭を下げる金子を、父も母も名残惜しそうな目で見つめる。

「本当に、また遊びにきてね。莉央がいなくても金子くんひとりで来ていいから」

だからなぜお前らは実の愛娘を無視して、金子ばっかり可愛がるんだ。
そう思ってふてくされていると、「莉央」とお母さんに声をかけられた。

「金子くんを大切にしなさいよ」

寡黙な父にも頷かれ、気まずくて目をそらした。

大切にするもなにも、私たちは恋人同士じゃないんだけど。こんなに嬉しそうな両親を騙していることに、胸が痛くなる。



駅までタクシーに揺られていると、隣に座り金子が眠そうにあくびをした。

「金子さん、二日酔いですか?」

お父さんに付き合って、けっこう日本酒飲んでいたからなぁと心配になって声をかけると、「いや」と首を横に振った。

「お前の部屋、落ち着かなくて」

窓の外を見ながら、ぽつりとそう言う。

もしかして、私と一緒の部屋だったから、意識して寝られなかったとか、そういうこと!?
ちなみに私は気疲れと叫び疲れでぐっすり超熟睡でしたが!

「薄暗い部屋で壁一面のポスターと、無数のフィギュアに見られてると思うと、ぜんぜん熟睡できなかった。お前よくあの部屋に平気でいられるな」

あぁ。そういうことですか。

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