腹黒王子に秘密を握られました
「くっそう……」
はぁはぁと息を切らし、私は床に這いつくばる。
足には脱げかけのショートブーツが引っかかり、辺りには放り出したバッグの中身が散乱してる。
急いで部屋に入ろうとして、思いきりつまずいて転んだ。
痛いよう。なんて泣きべそかきそうになるけど、なんとか歯を食いしばって、テーブルの上のリモコンに手を伸ばし、テレビを付ける。
すると色鮮やかな映像と共に流れてきた、軽快なエンディングテーマ。
「終わっちゃった……」
ずっと楽しみにしていたアニメの第一話。リアルタイムで見たかったのに……。
完璧なタイムスケジュールを組んでいたのに、くだらない無駄話のせいで、乗りたかったバスに乗り遅れ、仕方なく乗った次の便は、三つ前のバス停にある役所の退勤時間とかさなり超満員で、椅子に座れないどころか、ぎゅうぎゅうに押され、乗ってるだけでヘトヘトだった。
バスを降りてから全力疾走しようにも、揺れるバスの中で必死に踏ん張って立っていた足はもう限界で、急げば急ぐほど足がもつれた。
ようやくたどり着いた部屋で、盛大に転んで情けない今の状況に至る。
くっそう、これも全部あの、金子敦のせいだ。
あいつが無駄に話しかけてくるから……!
こみあげる怒りに歯ぎしりをする。