腹黒王子に秘密を握られました
 

ハンドルを握り前を向いたまま曖昧に微笑んで、違う話題を口にした。

「柴崎くんの家はどの辺? 課長には言っておいてあげるから、今日はまっすぐ帰っていいよ」

「マジですか? じゃあうちに寄って行きます?」

寄るわけないだろうが、バカヤロウ。
家に帰るのはお前だけで、私は事務所で仕事が残ってるっつうの。

「柴崎くん、ナビに家の住所入れて表示してくれる? 私運転あんまり自信ないから、ナビがないと知らない道走れないの」

「はぁーい。友野さんの家はどの辺なんですか?」

なんでお前に私の家を教えないといけないんだよ。
絶対言うか。言ってたまるか。

「今度友野さんの家に遊びに行ってもいいですか?」

ムリムリムリムリ。断固拒否だ。

「あ、なんか誤解してます? 勉強のためにいろんな物件見ろって課長に言われたんですよ」

一課のための勉強なら、私の住んでる賃貸マンションなんて見ても、なんの勉強にもなんねぇだろ。
分譲マンションとか一戸建てを見ろよ。

「賃貸とか分譲とか関係なく、実際に家具が入って人が暮らしてる部屋をたくさん見て、空の物件とか図面から、人の生活を想像できるようになれって」

なるほど。それは確かに一理ある。


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