腹黒王子に秘密を握られました
間取りだけ見るとすごくいい部屋に見えても、実際に住んでみるとコンセントの位置や窓の高さが不便で後悔することはよくあることだ。
……だが、断る。
あの聖域に三次元の男を立ち入らせるわけにはいかない!
「ダメですかぁ。あ、そっか。彼氏の金子さんに怒られちゃいますよね」
まぁ、金子も私の部屋に一歩も入れる気はないんだけど、面倒だからそういうことにしておいて。
「それにしても、金子さんと友野さんって、本当に付き合ってたんですね」
「どういう意味?」
「女の子たちの噂で付き合ってるって聞いたけど、なんとなく不釣り合いなふたりだなぁと思ったから」
ちょうど信号で止まったタイミングでそう言われ、思わず柴崎くんの方を振り向く。
すると童顔のかわいらしい笑顔が、一瞬だけ微かに歪んだ。
「不釣り合い……?」
ぞわりと毛穴が逆立つような違和感。
思わずハンドルを持つ手に汗がにじんだ。
「あ、友野さん、信号青になりましたよ」
いつものように無邪気で明るい声に戻った柴崎くんにそう言われ、慌ててアクセルを踏み込んだ。