腹黒王子に秘密を握られました
「すいません、ちょっと柴崎くんのことを考えていたらたかぶりが抑えきれなくて」
そう言いながら、車を降りて鍵をかける。
「……お前、不審者だって通報されないように気を付けろよ」
不審者って、ひどい。
「柴崎はどうだった?」
「ねんざでした。鎮痛剤と湿布をもらって、家まで送ってきました」
「そっか。大したことなくてよかった。柴崎に変なこと言われなかったか?」
「変なことって?」
「口説かれたりとか」
「まさか」
私がありえないです、と首を横に振ると、少し疑わしそうな目で睨まれた。
「それより、西村さんとの商談はどうでした?」
「あー、一応話は進めたけど、正直まだためらってるみたいだな。ま、専任契約の期間はまだまるまる三か月あるし、あせらずにもうちょっと様子みてみる」
そう言った金子が少し意外で思わず顔を見上げた。
「珍しいですね。仕事に私情を挟むなって言う金子さんが、そんなのんびり待ってくれるなんて」
「こっちの私情を挟むのは論外だけど、オーナーの私情ならできるだけ汲むべきだろ。それに、お前の実家を見て、少し気持ちがわかった」
「え……?」