腹黒王子に秘密を握られました
「今まで家自体にあんまり思い入れがなかったけど、あの居心地のいい家を見たら、それまで住んでた人の想いを大切にしたいっていう気持ちも少し理解できた」
そんなに私の実家を気に入ってくれたんだ。
じゃあ、また遊びに来てくださいよ、なんて軽々しく言えるわけもなくて、私は無理矢理話題を変えた。
「それにしても、柴崎くん、ひどいですね」
「柴崎がどうかしたか?」
「拓斗くんのおうちでは無神経な質問するし、かと思えば西村さんの家には一歩も部屋に入りもしないし。営業としてやる気あるんですかね」
「あぁ」
私の悪態に金子は苦笑いしながら頷いた。
「二課で持て余したから、一課に異動になったんですか?」
「まぁ、それに近いだろうな。二課は賃貸物件だから、受け身の営業だしやり方もわりとカジュアルだから、かっちりした一課に一回まかせて基本を教え込んでやれってことだろ」
「なんか、貧乏くじをひかされたみたいですね」
他の部署でお手上げの問題児をまかされるなんて、いい迷惑だ。
「そうでもないと思うけど。あいつけっこういい営業になるぞ」
「え、どこがですか!?」
常識もないし口のきき方もなってないし。
営業としてはかなりダメダメだと思うんだけど。