腹黒王子に秘密を握られました
「そんな感じでねー、もう毎日仕事楽しくて、肌がつやつやするわ! 萌えは日々を潤すよねぇ」
なんてスマホを握って力強く言うと、電話の向こうから大きなため息が聞こえてきた。
『なんだ。あのイケメンに恋人のフリしてって言われて、恋に発展したかと思ったのに、相変わらず莉央は腐ってんね』
「えへへ、ありがとう」
『だからそれ、褒め言葉じゃないからね?』
久し振りに友達の花乃が電話をかけてきてくれた。
前にイベントで金子に恋人のフリを強要されたのを見て、それからどうなったのかずっと心配してくれていたらしい。
『それにしても、あのイケメンリーマン、さくっと手を出しちゃうかと思ったら、意外と紳士だったんだね』
「いや、恋人のフリなんだから、手を出すわけないでしょ」
『だって実家で同じ部屋に泊まったんでしょ? 少しもそんな雰囲気にならなかったわけ?』
「部屋中フィギュアとポスターだらけで落ち着かなくて寝れなかったとは言ってたけど」
『あぁ、確かにそんな部屋じゃ、立つもんも立たないか』
「下品なことを言わないでください」
私が頬を膨らませると、花乃は意地悪く笑った。
『それにしても、莉央、少し変わったんじゃない?』
「そう?」
『前はこんなに楽しそうに会社の話をすることなんてなかったし、知り合いを妄想の対象にするなんて、ありえないとか言ってたクセに』
「は! 確かに!」
前はリアルに知ってる三次元の男なんて、生々しくてとても妄想する気にならなかったのに!
「すごい、私腐女子としてステップアップしたかも! 今なら地雷だったBLの実写化も美味しくいただける気がする!」
『いやそれ、ステップアップって認識でいいのか?』