腹黒王子に秘密を握られました
いつものように朝早いバスに乗り、窓の外をぼんやりと眺める。
葉を落とした銀杏並木の下を歩く高校生の姿を見て、秋の深まりを実感する。
信号待ちで止まっていると、歩道を歩く制服の上にセーターを着た男子高校生が、寒そうに背中を丸めポケットに手を突っ込んで歩いているのが見えた。
後ろから走って追いかけてきた同級生におしりを蹴られる。
怒って振り向いた隙に横をすり抜けかけていく男の子。
待て、と怒鳴りながら追いかけて、首を捕まえヘッドロックする。
悪ふざけをして笑う男子高校生の吐く息はうっすらと白く、頬は冷たい風にさらされたせいでほんのりと赤く上気していた。
あぁ、晩秋の高校生、ホント尊い。
気温が低くなったせいで露出は減るけれど、代わりにスキンシップが多くなる。
今年も男子高校生たちが、手が冷たいなんて言ってセーターの中に手を突っ込んだり、真っ赤な耳をひっぱったり、意味なくくっついて暖をとったりする季節がやってくる。
なんて、すばらしき青春。
美しい光景にひとり歯をくいしばっていると、信号が青になったのか、プシューという音をたてながらバスが動き出した。