腹黒王子に秘密を握られました
あああぁ、楽しそうにじゃれあい取っ組み合いをする高校生をもっと見ていたかったのにっ!
目の前の光景が名残惜しくて必死に窓におでこをくっつけていると、背後からあきれたようなため息。
「お前、ほんと高校生好きだな」
振り返ると、私のことを覚めた目で見下ろす金子がいた。
「別に高校生が好きなわけじゃないです」
いるならさっさと声かけてくれればいいのに。
人が妄想にふけっているのをじっと観察してるなんて、趣味が悪い。
「そう? すげー目を血走らせて必死に見てたから、年下好きなのかと思った」
「血走らせてません」
「あ。年下好きなのは否定しないんだ?」
「からかわないでください」
私がふくれっ面をすると、金子はこちらを見ながら薄っすらと目を細めた。
「さっきの高校生、柴崎に似てたな」
「そうですか?」
「ふーん、無意識なんだ?」
「なにがですか?」
「いつも目で追ってるの」
「は? なにをですか?」
わけが分からずむっとしながら睨み上げると、口端を微かに上げていじわるに微笑む。
細身のスーツに身を包み、センスのいいチェスターコートを羽織った金子は、朝っぱらから非の打ち所のない爽やかなイケメンだ。
バスの窓から差し込む秋の朝の光が色素の薄い瞳をさらに明るく見せる。