腹黒王子に秘密を握られました
漫画やアニメ、ゲーム。いわゆる二次元の世界が大好きなひとたちのことをオタクというけれど、その中でもちょっと特殊な、男同士の恋愛が大好物なひとたちを腐女子という。
オタク文化に関しては、国からも日本が誇るカルチャーだなんてもてはやされて、すっかり世間に浸透しているけれど、やっぱり自分が腐女子だなんて胸をはれる人は少ない。
二十七歳にもなって、彼氏も作らず部屋に閉じこもり二次元に浸りBL漫画を描くのが趣味です、なんてばれたら、即アウトだ。人生終わる。
だからこの秘密は、絶対に人に知られてはならないのだ。
改めて、この秘密は墓場まで持っていくんだと心に決めて、ペンタブを握る。
ここ数週間、必死に仕事を終わらせ定時で上がり、ひとり部屋でなにをしていたかというと、今週末の同人誌即売会用の原稿を書いていたのだ。
本当はもっと余裕を持って仕上げ、印刷所の早割期間のうちに脱稿するつもりだったのに。
それが気付けば早割どころか納期ギリギリの割増期間になっていた。
くっそう。ちゃんと早割料金で印刷していれば、追加料金分で何冊もの素敵な薄い本を買えたのにぃ……っ!
なんて、今更悔やんでも仕方ない。
それどころか、急がないと印刷が間に合わなくなる。こんなに必死になって書いてるのに原稿が落ちる!
それだけはなんとしても避けなければ……っ!
そう気を引き締め直し、パソコンに向かった。