腹黒王子に秘密を握られました
そして私も着ていたジャケットを脱ぎ腕まくりをすると、柴崎くんが驚いた顔をした。
「友野さんもやるんですか?」
「新人さんにだけこんな場所で力仕事させるの、悪いでしょ」
「そんなの、気にしなくていいのに」
本当は、事務所で座ってばかりだから、身体を動かしたくなっただけなんだけど。
前に使った人が、適当に放り込んだらしく、大きなのぼりが倉庫の奥でごちゃごちゃになって転がっていた。
あぁ、こんな置き方をしたらシワになってしまうのに。
しかもついた泥やよごれをそのままにしておいたらしく、あちこち薄よごれている。
「ごめん、柴崎くん。のぼりの旗がよごれてるから、一回洗おうかな。外すの手伝ってもらっていい?」
「いいですよ。事務所に洗濯機ってありましたっけ?」
「洗濯機はあるけど、色落ちするから手洗いするの」
「うわ、これ全部ですか?」
「洗うのは私がやるから大丈夫だよ」
「あ、俺もちゃんと手伝いますよ」
当然のように言われ、ちょっと見直した。
営業の男の人たちは、そういった雑用は当たり前のように営業アシスタントの仕事と思い込んでいるところがある。しかも洗濯なんて、女の仕事だと決めつけられるし。
柴崎くん、けっこういいところあるじゃん。