腹黒王子に秘密を握られました
「なんかこういうの、楽しいですねー」
ゴム手袋をはめた柴崎くんが、楽しげにじゃぶじゃぶのぼりを洗う。
「あんまり乱暴にしないでね」
「はぁい」
私が汚れた部分を中性洗剤で軽く洗い、柴崎くんが隣で全体を水ですすぐ。
こうやって洗ってから干しておけば、週末までにはシワも伸びて綺麗に乾くだろう。
ついでにほつれや破れはないかもきっちり確認していく。
柴崎くんのおかげで早めにのぼりをチェックできてよかった。
ギリギリに汚れを見つけたら、大慌てするところだった。
そう思いながらぽんぽんと汚れを叩いていると、横から水が飛んできて肩にかかった。
「つめた……っ」
「あ、すいません、友野さん。服、濡れちゃいました?」
「ううん。このくらい大丈夫だけど。柴崎くんこそシャツとかスーツのズボン汚しちゃったら大変だから、気を付けてね」
「はい!」
なんて言ったそばからゴム手袋をはめた手を水道の蛇口の下に差出し、勢いよく跳ね返った水が当たりに飛び散る。
ちょうど屈んで汚れを擦っていた私の顔にも直撃した。