腹黒王子に秘密を握られました
「きゃ……っ!」
「うわぁ、すいませんっ!」
ドジっ子か、お前はっ!!
怒鳴りたいのを必死でこらえていると、柴崎くんが慌てて手をのばし蛇口を閉める。
「友野さん、ごめんなさい! びちゃびちゃですね」
はいもうびちゃびちゃですよ。
顔を直撃した水が、顎からぽたぽたと滴る。
顔をぬぐいたくても、ゴム手袋をはめたうえに洗剤がついているから動けない。
どうしようかと立ち尽くしていると、柴崎くんが近くにあったタオルを持ってきた。
「タオルです!」
「あ、ありがとう……」
タオルを受け取るためにゴム手袋を脱ごうにも、濡れた手にぴたりとくっついて、なかなか腕が抜けない。
じたばたしているうちにしたたり落ちた水が、服の胸元まで濡らしどんどん気持ち悪くなる。
「あー、もう。拭きますね」
見かねた柴崎くんはタオルを私の頭に乗せ、上からごしごしと乱暴にふいてくれた。
こうやって至近距離で向かい合うと、柴崎くんもけっこう背が高いんだな。
いつも背の高い金子の後ろをついて回ってるから、すごく小柄なイメージだった。
タオルの上から髪を拭いてくれる手は大きいし、目の前ののどには目立たないけれどのどぼとけもちゃんとある。
ちゃんと男の子なんだなぁと思いながら見上げていると、ふいに柴崎くんの手が止まった。