腹黒王子に秘密を握られました
 

「……お前、気を付けろって言っただろ」

誰もいないロッカーに入った途端、低い声でそう詰られた。

「なにがですか?」

「柴崎だよ。なに無防備に身体に触らせてんだよ」

「身体に触らせるって、私が柴崎くんに逆セクハラしてたみたいじゃないですか。濡れたからタオルで拭いてくれてただけですよ」

人を痴女扱いするなよ、失礼な。

「そうじゃなくて……。服も中透けてるの、隠せよ」

「服?」

そう言われて自分の服を見下ろすと、水に濡れたせいで、着ていた薄手のカットソーが身体に張り付き、中に着たキャミソールの色が透けて見えていた。

「あー、でも中にキャミソール着てるから、大丈夫ですよ」

「大丈夫じゃねーよ」

「濡れて気持ち悪いから脱いじゃいますね」

「って、おい!」

濡れて貼りつく感触が気持ち悪いから、とりあえず脱いじゃおうとカットソーのすそをまくると、慌てて金子に手を掴まれた。

「こんなところで脱ぐな、バカか!」

「ちゃんと中に着てますよ?」

確認させるようにすそをまくって中のキャミソールを見せると、思いきり顔をそらされた。
そんな汚い物を見るような態度をとらなくてもいいじゃないかと、ムッとする。


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