腹黒王子に秘密を握られました
濡れたカットソーを脱いで、かわりにロッカーに置いてあったカーディガンを着て仕事をしていたけれど、冷たい水を頭からあびたせいか、仕事中から少し寒気がしていた。
まぁ、家に帰って早めに寝てしまえば大丈夫だろうと、特に気にせずにいたけれど、その夜ものすごい寒気に襲われた。
どうしよう、すごく寒い。
ぎゅっと身体を丸め、両腕で肩を抱きしめても、震えが止まらず布団の中でガチガチと歯がなる。
これは熱が出てるな。
小さい頃からいつも、風邪は突然熱が上がるタイプだった。
高熱になってしまえばまともに動くこともできない私は、ひたすら部屋の布団の中で母に看病してもらっていたけれど、一人暮らしの今は頼る相手がいない。
どうしよう。
部屋に風邪薬あったっけ。
それどころか、飲み物も食料もろくにないかも。
こんなことなら、寒気に気付いた時に病院に行けばよかった。
せめて会社の帰りにドラッグストアに寄ればよかったのに。
そんな後悔をしても今更遅い。
あるかどうかもわからない風邪薬を探す気にもなれずに、私はぎゅっときつく目をつぶってひたすら寒さを堪えて丸くなる。