腹黒王子に秘密を握られました
ピンポンピンポンピンポーン。
その間も容赦なく続くピンポンの嵐。
一体なんだよ、非常識なやつめ。
これで新聞の勧誘とかだったら、その場で即シバきたおすぞ。
コラァ。
そんな悪態をつきながら、身体をひきずるようにしてなんとか玄関の前にたどりつく。
「はい……」
あー、今日初めて声を発したけど、私すごいガラガラ声。
これは完璧風邪だな。
「わ、友野さん、すごい声! 大丈夫ですか!?」
玄関のドアの向こうから聞こえてきたのは、無邪気な後輩、柴崎くんの声で、一瞬で全身から血の気が引く。
な、なんでこいつがここに……っ!?
「友野さん何の連絡もなく会社にこないし、携帯に電話しても通じないから、心配してきたんです」
「なんで、私の家の住所……?」
「あ、総務に聞きました」
おい、個人情報ーっ!!
勝手に人の住所教えてんじゃねぇよぉー!
「やっぱり風邪ですか?」
「あー……、ごめんね。ちょっと具合悪くて……つッ」
言いながら、喉が苦しくなって咳き込む。
寒い玄関にいるだけでも辛いのに、ドアの向こうにいる相手に聞こえるように声を張り上げるのも、相当しんどい。