腹黒王子に秘密を握られました
「わ、大丈夫ですか!? ちょっとドア開けてください!」
「む、無理……! 気にしなくていいから。大丈夫だから」
ゴホゴホと咳き込みながらなんとかそう言う。
このドアを開けるとか、絶対無理だから……!
「俺が昨日水をかけちゃったから風邪ひいちゃったんですよね!? もしかしてそうかなと思ってスポーツドリンクとか風邪薬とか買ってきました」
スポーツドリンクに風邪薬。
それ、のどから手が出るほど欲しい。
でも、ドアを開ければこの部屋を柴崎くんに見られてしまう。
そう思って自分の部屋を振り返る。
壁一面にはられたアニメのポスターに、祭壇のように飾り立てられた各種グッズ。
ベッドにはキャラクターのプリントされたクッションがぎっしり。
「……無理!」
この部屋を見られてオタクだってことがばれるくらいなら、この場で潔く切腹します。
「何言ってるんですか、そんな辛そうな声だして」
ってかなんで柴崎くんがくるの? どうして金子が来てくれないの?
金子が来てくれたなら、渋々ながらもこのドアを開けるのに。
金子は私のこと、心配なんてしてないの?
ああだめだ。
熱で脳みそ腐ってるわ。
「本当に、大丈夫だから帰って……」
なんとかそう言いうと、目の前がゆっくりと暗くなってきた。
あ、やばい。
そう思って口元を抑えてその場にうずくまる。
ドアの外では柴崎くんが、必死に何かを叫んでいた。
その声が遠くなっていくのを聞きながら、私の意識は遠くなった。