腹黒王子に秘密を握られました
ぎょっとして飛び起きると、ぐらりとめまいがして視界が暗くなる。
「わ、落ち着いてください。まだ熱があるんだから」
慌てて身体を支え、ベッドに寝かしてくれる柴崎くん。
なんでお前、人の部屋の中にいるんだよ!
「話している最中に友野さん倒れちゃったから、慌てて管理人さんに頼んで鍵を開けてもらったんですよ」
なんでそのまま見捨ててくれなかったんだ。
余計なことをしやがって……!
勝手に鍵を開けた管理人、あとで呪ってやる。
「大丈夫。今はゆっくり休んでください。喉かわいてます? 食欲あるならレトルトのおかゆ少し食べてからお薬のみましょう」
「あ……、ありがと」
柴崎くんは私の部屋のこのアニメグッズの山を見たはずなのに、今までと少しもかわらぬ人懐っこい笑顔で話しかけてくる。
え、この子。このオタク部屋を見て引かないの?
オタクキモイとかいう反応を予想してたんですけど。
「会社には俺が連絡しておきました。課長に友野さんひとりじゃ心配だから、看病してやれって言われました」
この子の目には、オタクグッズが目に入らないのか?
「おかゆあたためましたよ。起き上がれます?」
それとも、もしかして柴崎くんも同族とか?
「ふーふーしてあげますね」
こいつも同じオタクっていうなら、こんなに動じないのも納得できる。
「はい、あーん」
いやでも、こいつのどこをどう見てもオタク要素ないよなぁ。