腹黒王子に秘密を握られました
 
「やっぱり、そうなんですね」

黙り込んだ私を見て、柴崎くんが勝手に納得して頷いた。

「二課の相楽さんたち、えげつないくらいしつこく金子さんに言い寄ってたから、迷惑だろうなーって前から思ってたんですよね。でも友野さんと付き合いだしたって噂が流れてからは、そういうのなくなったから。それが目的だったんですね」

なんでこいつ、こんなに鋭いんだろう。
無邪気で天然のおバカキャラかと思ったら、ぜんぜん違うじゃん。詐欺じゃん。

近くを通ったウエイターさんが、私が落としたフォークを拾い上げ、かわりに綺麗なものを持ってきてくれた。

カーディガンのそでで目元を隠しながら「ありがとうございます」と受け取る。
だけどとても食事を続ける気分じゃなくて、受け取ったフォークをテーブルの上に置いて口をつぐむ。そんな私を見て柴崎くんはテーブルに頬杖をついた。

「恋人のフリをするうちに、本気で金子さんに惚れちゃったんですか?」

「別に、惚れてないし」

「ふーん。じゃあ俺と付き合ってださいよ」

「はぁ?」

突拍子もない発言に、驚いて目をむくと、柴崎くんは両肘をテーブルについて小首をかしげ、にっこりと可愛く笑って見せた。

「オタクだってばらされたくないなら、俺と付き合って」

こてんと首を倒し、上目遣いで見上げてくる。



……こいつ、むかつくほど、あざとい。



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