腹黒王子に秘密を握られました
 

「柴崎が、家で看病してたんだって?」

「あ、急に家まで押しかけてきて……」

「部屋の中に入れたの?」

「それは、なりゆきで仕方なく……」

私が入れたわけじゃなく、管理人さんが勝手に鍵を開けたんだから仕方ない。

「ふーん」

不機嫌そうに遠くの天井を見ながらつぶやく。

「それで、部屋の中を見られて、オタクだってことがばれまして」

私が小さな声で言うと、ゆっくりと視線がこちらに移った。
見られている、そう思うと、妙な緊張を感じて手のひらに汗が浮かぶ。

「で?」

「みんなにばらされたくなかったら、俺と付き合ってって……」



お願いだから、怒って。

心の中でそう願う。

だから気を付けろって言っただろって。
付け込まれるなって言っただろって。

お前はバカだなって、呆れながら叱って。

だけど、金子は小さくため息をついただけで、そんなことは言ってくれなかった。


 

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