腹黒王子に秘密を握られました
「子供を離婚の原因にすんなよ。ふたりともあなたを大切に想ってるから離婚するのよなんて綺麗ごと、無意味なんだよ。自分のせいで家族が壊れてしまったなんて思わせるような重たい身勝手な愛を、子供に背負わせんなよ。本当に子供のことを思ってるなら、もっとみっともなくあがいてみせろよ」
柴崎くんの言葉に、両親は頭を殴られたような表情で固まっていた。
「……柴崎」
金子が静かな声で柴崎くんを戒める。
柴崎くんも言いたいことを言ってすっきりしたのか、ぺこりと頭を下げて黙り込んだ。
「大変失礼しました。物件、お任せいただけるでしたら、私たちもできるかぎり力になりたいと思っていますので、ご検討ください」
黙り込む両親に向かって、金子が綺麗な動作で頭を下げる。
暴言を吐いた柴崎くんのことをもっと謝罪するのかと思ったけれど、金子はそれ以上謝る気はないようだった。
拓斗くんの両親も、複雑そうな表情を浮かべてはいるけれど、柴崎の暴言を責める気はないらしく、黙ったまま会釈を返す。
そんな様子を拓斗くんは黒い綺麗な瞳をまんまるにして、きょとんとして見ていた。
思わずきゅっと小さな手を握る。
すると拓斗くんは前を向いたまま、私の手を握り返してくれた。
その細い指の温かさが愛おしくて、少し泣きたくなった。