腹黒王子に秘密を握られました
「えー、ぶつかってるんじゃなくて、朝のハグなのに」
「日本の会社にハグをする習慣はないと思うよ」
本気で勘弁して。
ほら、今通りかかった二課の女の子の視線が、凶器のようにするどいんですけど。
こんなことを会社でしてたら、ほかの女子社員から嫌われるのも仕方ない。
最近いつも柴崎くんが私に付きまとっているから、海外勤務のエリートと二股をかけて金子を騙して付き合った上に、今は新人の柴崎くんを狙ってるクソビッチという噂が、あっという間に広がった。
ちがうから!
私誰とも付き合ってないから!
ビッチどころか、キスもしたことがない、綺麗な身体の乙女ですから!!
と叫びたいけれど、真相を話せばオタクということもばれてしまうから、黙って耐えるしかない。
「友野さん、今日も一緒にランチ食べましょうね」
「ごめんね、今日は私お弁当なの」
「あ、じゃあ俺コンビニでなにか買ってきます」
「うーん、ひとりでゆっくり食べたい気分なんだ」
「へぇ……」
こてんと可愛らしく小首を傾げた柴崎くんが、にやりと笑う。
「じゃあ、ばらしてもいいんですね?」
ほんと、こいつ性格悪いな!
思わず顔がひきつった。