腹黒王子に秘密を握られました
次の日
会社にくると、私のロッカーの前に大きな白い山があった。
なんだろうと思い近づくと、細かく砕かれた書類の切れ端だ。
きっとシュレッダーの中身をだれかが私のロッカーの前にぶちまけたんだろう。
なんてわかりやすいイタズラだ。
がっくり肩を落としながらゴミ袋を持ってきてつめたい床にひざをつき、小さな紙クズを拾い集める。
いつも早めに会社に来るようにしててよかった。
こんな情けないところ、誰にも見られたくなかったから。
なんとか目処がついてから、掃除機を持ってきて細かなほこりを吸い取る。
なんかもう疲れた。
今日はトイレ掃除はいいや。
毎日の日課だった掃除をする気力もなく、ぐったりとしながら一課の自分の席で休もうとすると、私のデスクの上にも椅子の上にも、同じように白い紙切れが散乱しているのをみつけた。
「……勘弁して」
なんて幼稚な嫌がらせだ。
嫌いな人の席にゴミを置くなんて、小学生並みの低レベルだ。
紙クズだらけの自分の席を見て、思わず脱力してしゃがみこみそうになったけれど、このままにしておくわけにもいかず、仕方なくゴミをかき集める。
椅子やデスクが並ぶ事務所の中のゴミ集めは、ロッカーよりも大変で、床にはいつくばるようにして掃除をしていると、後ろからクスクスと微かな笑い声が聞こえてきた。
あぁ、もう。
めんどくせぇ。
ぎゅっと目をつぶり、笑い声を聞こえないフリをして掃除に集中する。
指先で摘まんだ小さな小さな紙の切れ端。
その中に『シネ』や『ビッチ』なんて言葉が書かれた紙も混じっていた。
自分の心もこんなふうに粉々に引き裂かれていくような気がして、息苦しくなる。
こんな嫌がらせ、これからもずっとされるのかな。
そう思うと、もう全てが嫌になって、泣きたくなった。