腹黒王子に秘密を握られました
「うっさい」
「ひどい、心配してあげてるのに」
なにが心配だ。
この今の最悪な状況の、何割かは確実の柴崎くんが原因でもあるのに。
そう文句を言ってやろうかと思ったけれど、残りのほとんどの割合は、自分のせいだと分かっているから、私は黙り込んでお弁当の残りをかきこむ。
事務所の隅っこの目立たない場所で、私と柴崎くんは一緒にお昼を食べていた。
正しくは、隠れてお弁当を食べていた私を目敏く見つけた柴崎くんが、勝手に横に座ったっていう状況なんだけど。
「それにしても、拓斗くんのおうち、うちと契約してくれてよかったですよねー」
コンビニのお弁当を食べながら、のん気に笑う柴崎くん。
「あれで他社と専任契約されちゃったら、俺課長に怒られてましたよね」
「分かってるなら、あんな失礼なことを言わなきゃいいのに」
「まぁそうなんですけど、どうしても黙ってられなくて」
ぽつりとこぼした言葉の温度に、不思議に思って視線を上げ柴崎くんの顔を見た。
私と目が合うと、柴崎くんは小さく笑って上を仰いだ。
ここは事務所の中で見えるものはグレーの天井だけで、どんなに見上げたって空なんて見えないのに、柴崎くんは太陽でもみるように目を細めた。
「なんか、自分んちみたいで」
「自分の?」
「うちも親、離婚してるんですよ」
「……そうなんだ」