腹黒王子に秘密を握られました
 

「俺二人兄弟で、運動も勉強も得意なデキのいい兄貴と、身体の弱い俺と」

「柴崎くん、身体弱かったの?」

「小児喘息で、今はもう平気なんですけどね。俺のために空気の綺麗な田舎に引っ越そうって母と、仕事があるんだから簡単には引っ越せないっていう父の間に俺達兄弟振り回されて、結局離婚して父は兄貴と東京に残って、俺と母は母方の実家に引っ越したんです」

思わず私が箸を置くと、柴崎くんは上を向いたまま話を続けた。

「母は優しかったし、自分のためにそれまでの生活を捨てて田舎に引っ越してくれて感謝してますけど、離婚したあとに電話で、本当は東京で暮らしたかったって愚痴ってるのを聞いちゃったんですよねー。俺ひとりのせいで家庭が壊れたんだって責められてるような気がして、地味につらかった。兄が一流大学に進学したとか、仕事で成功したって聞くたびに、母は俺より出来のいい兄と一緒に暮らしたかったんじゃないかって。俺がいなければ、離婚なんてせずにすんだのに」

柴崎くんが、拓斗くんの両親に向かって言った言葉を思い出す。
あの小さな拓斗くんに、同じ思いをさせたくなかったんだ。

「暗い話してすいません」

ぽつりと言った柴崎くんに、慌てて首を横に振った。


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