腹黒王子に秘密を握られました

必死に冷静になろうとしても、勝手に冷や汗がでる。呂律がまわらないし、視線が泳ぐし。私かなり挙動不審だ。

「せっかく彼氏と一緒だったのに、わざわざ会社に来たの?」

はっ! そうだった。今私は遠距離恋愛中の彼氏とラブラブな時間を過ごしているという設定だったんだ!

それなのに、こんな時間に会社にいるなんて、怪しい。ものすごく怪しい!

「いや、えっと、仕事を中途半端にしておくと、なんだか気になって落ち着かないので……」

そんな私を見て金子はくすりと笑うと、「えらいね、友野さん」と優しく笑った。
そして微かに首を傾げ、とんとん、と自分の頬を叩いた。

ちょっとなにそれ。
無邪気な誘い受けが、ヘタレな攻めに、ほっぺにチューしてってねだってるみたいな仕草だな、おい。
いや、落ち着け落ち着け。
一度家に帰って腐女子スイッチ入ったせいか、腐った視点で見てしまう。

「友野さん、普段はコンタクトなんだね。眼鏡姿はじめて見た」

「はぁ……」

なんだ、眼鏡かけてるねアピールだったのか。
無駄に萌える仕草しやがって。
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