腹黒王子に秘密を握られました
それを肯定だと受け止めたのか、西村さんは嬉しそうに話を続ける。
「うちの両親に金子さんの話を色々していたら、会ってみたいって我が儘言われちゃって。でも金子さん、嫌な顔ひとつしないで、マンションまで挨拶に来てくれるって」
「金子が、西村さんのご両親に挨拶を?」
「そうなんです。前にほら、若い新人の営業さんが柿の木から落ちて怪我をしちゃった時、金子さんとふたりっきりになったじゃないですか。あの時すごくいろいろ話を聞いてくれて、意気投合しちゃって、それから……」
頬を染め、嬉しそうに話す西村さんを見て、息が詰まりそうになった。
そうか、金子の彼女って、西村さんだったんだ。
頭を殴られたようなショックを感じた。
うちの実家で、楽しそうに私の両親とお酒を飲む金子の顔を思い出す。
あんなふうに優しい笑顔で、今度は西村さんのご両親と話をするのかと思うと、嫉妬で身体が熱くなった。
あんなくつろいだ表情を、西村さんにも見せているの?
「どうかしました?」
表情の強張った私に、西村さんが不思議そうに首を傾げた。
「あ、いえ……」
慌てて笑顔をつくり、とりつくろう。
だけど、どうしてもうまく笑えなくて、私は西村さんの視線から逃げるように顔を伏せた。