腹黒王子に秘密を握られました
 

「そうだけど……」

「この前、偶然西村さんに会って聞きました」

「そっか」

「嬉しそうでしたよ。すごく」

「そう。それならよかった」


金子が息を吸い込む音がした。
その何気ない息遣いまで、愛おしいと思ってしまった。

この人は、もう違う人のものなのに。
どんなに欲しいと願っても、私の物にはならないのに。

もし、恋人のフリをしている時に、彼を好きだと自覚していたら、なにか変っただろうか。
もし、柴崎くんにオタクだってことがばれずに、ずっと金子と恋人のフリを続けられたら、西村さんとは付き合わなかったんだろうか。


今更そんなことを考えてしまう私は、なんて身の程知らずのバカなんだろう。


ざわざわと波立つ心を落ち着かせようと、金子から顔をそむけ、震える息を吐き出した。




 

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