腹黒王子に秘密を握られました
「仕事に私情をはさみまくる、お前の悪影響だな」
なんて笑いながら、ポケットから煙草を取り出し口に咥える。
「そりゃ、恋人が家を壊すのが寂しいって言ったら、売上無視して私情を優先しますよね」
彼女の西村さんのためなら、百万円の利益も課長の説教も、苦にならないんだろう。そう思うと嫉妬で胸が痛くなる。
「は……? 恋人?」
私の言葉に、金子は煙草を咥えたまま、きょとんとこちらを見た。
「西村さんと、付き合ってるんですよね?」
「はぁ? なんでそうなるんだよ」
「だって、金子さん、新しく彼女が出来たって言ったじゃないですか! 西村さんが、両親に金子の話をしたら会いたがって今度挨拶に来てくれるって、嬉しそうに言ってたし。ふたりは付き合ってるんだなって……!」
「なんだそれ。どんな無茶な想像だよ。客に手を出すわけねぇだろ。家が取り壊されないように、色々協力してたから、お礼を言いたいって言われただけだよ。ついでに拓斗くんの家族とも一度顔を合わせておきたいっていうから、挨拶の場を設けてもらったんだよ」
金子はそう言って、不貞腐れたように煙草を吸い込む。
ふーっと白い煙を吐き出すと、こちらを睨んだ。