腹黒王子に秘密を握られました
「本当に、お前は俺のこと、なんにも分かってねえよな」
「分かんないです。金子さんのことなんて」
そう言って、ぎゅっと自分の服を握った。
勇気を振り絞るように、自分の服の裾を握りしめながら、必死に口を開く。
「分かんないけど、でも、金子さんが、好きです……っ!」
「はぁ?」
私がそう言うと、金子の指の間からぽろりと煙草が落ちた。
「こんな根暗な腐女子なんて、気持ち悪いって分かってるし、金子さんに彼女がいるってのも知ってるけど、でも、実家に帰る前に、一度ちゃんと気持ちを伝えたくて。ほんと、断られるのは覚悟の上で言ってるんで……」
早口でまくしたてる私に、金子の手がのびてきた。
頭を、なでられるのかな……? なんて思っていると、
「おい、テメェ。ふざけてんのか」
なぜか金子の大きな手は、容赦なく私のこめかみを掴む。
「い……っ! いたいいたいいたいいたいいたいいたいっ!!」
なぜにこの状況でアイアンクロー……っ!!
意味わかんない!
どうせ振るならもっと優しく振ってくれればいいのに、こいつホント悪魔だ!
「なにが今更好きだよ。しかも、実家に帰るってなんだよ!?」
「柴崎くんに頭にきて、自分から腐女子だってカミングアウトしちゃったから、もう会社にいられません! 実家に帰ってお見合いします! だから離してっ! 頭蓋骨が砕けるぅぅぅぅーっ!!」