腹黒王子に秘密を握られました
 
そう叫んでいると、また金子の手が伸びてきた。

「テメェ、結婚の件より、アニメのくじに食いついてんじゃねぇよ」

「いたいいたいいたいいたいいたいいたいっ!!」

再びくらった容赦ないアイアンクローに、私は悶絶して泣き叫ぶ。

「でもでも! 金子さん、彼女出来たって言ってたじゃないですか!」

「あれは、お前が女子社員から嫌がらせされてたから、お前を悪者にしたくなくてそう言ったんだろ。気づけよ、鈍いな」

「じゃあ、どうして仕事中、私を見ないんですか!?」

「……はぁ?」

こめかみの痛みと恥ずかしさで、顔を真っ赤にしながらそう言うと、金子が首を傾げながら手を離した。

「柴崎くんが言ってました。仕事中、金子さんは絶対私の方を見ないようにしてるって。好きなら自然と目で追っちゃうのに、そうやって見ようともしないってことは、私のこと好きでもなんでもないんだって」

「それは……」

口元を押さえ、言いづらそうに顔を逸らす金子。
やっぱり、柴崎くんの言葉は当たってるの?

「むかつくから」

「むかつく?」

ぽつりと言われ、むっとする。
なんで私を見るとむかつくんだ。やっぱりそれ、好きじゃないんじゃん。

「柴崎が一課に異動になってから、お前が妙にとろんとした顔で柴崎のことを見てるから、こいつに惚れてるんだなってむかついて、わざと見ないようにしてた」

「え……? 私そんな顔して柴崎くんのこと見てました?」

「見てたよ。俺達が朝、自販機の前でコーヒー飲んでたりすると、いっつも嬉しそうにじーっと見てた」
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