腹黒王子に秘密を握られました
「ああ! それ、柴崎金子カップルの可能性について考えていた時ですね」
「はぁ?」
「元々は柴崎くん、天然年下受けだなーって思ってたんですけど、不意に見せる鋭い表情が、実は攻めの素質があるなと見抜いちゃったわけなんですよ。無邪気な顔をして近づいてきた後輩に、無防備に心を許した先輩ががぶりといただかれちゃうなんて、美味しすぎる展開を想像して、ひとりで滾っていたというか……」
思わずぺらぺら喋る私を、金子はものすごく冷たい目で見ていた。
おっと、腐った部分があふれ出てしまった。
「なんだよそれ、嫉妬してた俺が、バカみたいじゃねーか」
「嫉妬、してたんですか……?」
「するだろ。好きな女が他の男ばっかり見てたら」
「でも、私オタクですよ?」
「知ってるよ」
「その上、腐女子です」
「それも知ってる」
「気持ち悪くないんですか?」
答えを聞くのが怖くて、ぎゅっと胸の辺りを握りしめながら金子を見つめる。
そんな真剣な私をからかうように、金子は優しく笑った。
「あー、まぁ、もしUSBに入ってたのが、ガチムチのおっさん同士がマニアックなプレイしてる漫画とかだったら、さすがに少し怯んだかもしれないけど」
「な……っ!」
思わず真っ赤になって言葉につまる。
私が描いていたのは、手が触れるだけで頬を染めるような、清らかで甘酸っぱいBLだ。
恋愛経験ゼロの私が、そんなこゆいものを描けるわけがない。