腹黒王子に秘密を握られました
「……それでも気持ち悪いとは思わなかっただろうな。惚れた弱みってこういうことか」
ひとりごとのようにそういう金子の手が、こちらに伸びてきた。
もしやまたアイアンクローかと身構えると、今度はその手が優しく私の頭をなでてくれた。
「最初はお前のこと、誰よりも真面目に仕事をして、面倒なことも率先してやって、いい子だなって思ってた。花の手入れもいつも丁寧にして、他の社員が働きやすいようにすごく気を遣ってくれて。そんな姿を見ていたらいつの間にか、好きになってた」
穏やかな声でそう言われ、驚いて顔を上げる。
「結婚間近の彼氏がいるって聞いて、諦めようと思ってたんだけど、あの日お前が忘れてったUSBを見て、デートや彼氏は嘘で本当は趣味に没頭してたっんだって知って、すごくホッとした。オタクとか腐女子とか正直どうでもいいくらい、お前に彼氏がいないってわかったことが嬉しかった」
「で、でも。それじゃあ、金子さんは猫かぶってた私が好きだったわけで、本性はぜんぜん違うし、こんな変人好きになるわけないし……!」
金子の告白が、嬉しいのか悲しいのかわからない。
たとえ始まりは私に好意を持ってたとしても、こんな素を見せた今、とっくに幻滅されてるに決まってる。
「おい、勝手に決めんな、バカ」
ぐい、と乱暴に頭をなでられた。
「素のお前を見て、もっと好きになったとか、考えられないわけ?」
「え……?」