腹黒王子に秘密を握られました
 
「些細なことで泣いたり叫んだり驚いたり忙しくて、二次元のことになるとキラキラ目を輝かせて語り出して。そういう素の表情を知ってるのが俺だけだと思うと、すげー優越感で、嬉しかった」

「うそぉ……」

「お前は、本当に俺のことを信用しねぇなぁ」

苦笑いでそう言いながら、金子は私の腰に腕を回し、ぎゅっと身体を引き寄せた。
突然のことに驚いているうちに、胸の中に抱きしめられる。

だだだだ抱きしめられてますっ!!
どどどどどうしようっ!

「これで、信用できるか?」

耳もとで甘く囁いて、私の顔をのぞきこむ。
押し付けられた逞しい身体とか、私の腰に回る長い腕とか、耳元で聞こえる息遣いとか。
もうはじめて体験することばかりで、頭がパニックになる。

どうしていいのかわからずに、顔を真っ赤にしてぶんぶんと首を縦にふると、金子がはぁっと大きなため息をついて、うなだれるように私の肩に頭を置いた。

「……莉央、すげー好き。本気で」

長身を屈め私の首筋に顔を埋めて、低い声で絞り出すようにそう言った。
心の中の熱を吐き出すように囁かれた言葉に、あぁ、この人は本当に私を大切に想ってくれているんだなと実感する。

「金子さん……」

心の水位がぐわりと上がって、涙があふれそうになる。
温かい、形のないもので心が満たされて、幸せなのに苦しい。

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