腹黒王子に秘密を握られました
「いいから、さっさと立て! 会社遅刻するぞ!」
フローリングに爪をたて必死に抵抗する私を、容赦なく引きずっていく金子。
「やだぁぁぁ! 絶対会社、行きたくないぃぃぃっ!!」
「なにふざけたこと言ってんだよ! テメェ社会人何年目だ」
「だって! きっともう会社中に私が腐女子だってばれてるもん! 恥ずかしくて行けないですっ!」
ガルルルルッとうなりながら、涙目で金子を睨む。
入社してから五年間、上品で穏やかな完璧な女のフリをしてたのに、今更腐女子だなんて、みんな気持ち悪がるに決まってる!
「俺が腐女子でも好きだって言ってんだから、他の奴の視線なんて気にしないで胸張って会社行けよ!」
「それとこれとは別ですーっ!!」
頑としてその場を動こうとしない私に、金子は大きくため息を吐き出し、引っ張っていた私のコートを離した。
「わかった」
ようやくわかってくれたのね。
可愛い恋人がこんなに嫌がってるんだもんね、無理やり会社に行けなんて血も涙もないこと言わないよね。
ほっとして顔を上げると、そこにあったのは悪魔の微笑み。
「じゃあ、実力行使だ」
「へ……っ」
にやりと笑った綺麗な口元を見て、青ざめる。
まさかまた、アイアンクローですか!?
行くって言わなきゃ頭蓋骨潰すぞとか言うんですか!?
ひぃ、DVだ!
これがうわさに聞くDV男か!!