腹黒王子に秘密を握られました
金子に連行され、いやいや会社に向かう。
あぁ、どうせ会社にいったらみんなに冷たい目で見られるんだろうな。
そう思って暗い気持ちで事務所に入ると、課長と目が合った。
「お、友野さん、今日はゆっくり出社なんだな」
「えっと……」
あれ、普段通り話しかけられた?
「いや、いいよ。いつも朝早く来て事務所の掃除してくれるの本当に助かってるけど、強制じゃないんだし面倒なときはやらなくても」
「はぁ……」
いつもと変わらない態度に、混乱する。
あれあれ? なんか予想と違うぞ?
もしかして、私が腐女子だって噂、広まってない?
「……友野さん、昨日と同じ服」
首を傾げていると、後ろからぼそっと声をかけられた。
「ひゃ!」
驚いて振り返ると、柴崎くんが並んで立つ私と金子を見て面白くなさそうに顔をしかめていた。
「もしかしてふたり、うまくくっついちゃった感じですか?」
柴崎くんの言葉ににやりと笑った金子が、見せつけるように私の肩に腕を回し抱き寄せる。
「まぁね」
「うっわ、勝ち誇っちゃってやな感じ。実は金子さんって性格悪いですよね」
「知らなかった?」
「むかつくー」
鼻にシワをよせてそう言った柴崎くんは、くるりと私に背を向けて歩き出す。
「ごめん、ちょっと」
私は肩を抱く金子にそう短く謝って、その腕の中から抜け出すと、慌てて柴崎くんの後を追った。