腹黒王子に秘密を握られました
 
「柴崎くんっ!」

「なんですか?」

面倒くさそうに振り返る柴崎くんに、おそるおそるたずねる。

「あの、もしかして、私が腐女子だってこと、言わないでいてくれた?」

「俺が女に振られた腹いせに、悪口言って回るなんてカッコ悪いことするわけないじゃないですか」

「ありがとう……」

「お礼言うなら相楽さんにじゃないです? あの人噂好きだし、絶対みんなに面白おかしく言いふらすと思ったのに、誰にも言わなかったみたいですよ」


相楽さんが……?

驚いて瞬きすると、ちょうど出社してきた相楽真子と目が合った。

ゆるふわの髪に、ぷるぷるの唇。ピンク色のチークに、くるんと綺麗にカールしたまつげ。

今日も完璧な仕上がりの相楽さんは、そのメイクに似つかわしくない険しい表情で、私のことを上から下まで値踏みするように眺めると、ふんと大きく鼻息を吐き出す。


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