腹黒王子に秘密を握られました
ビクッとして顔を上げると、私に負けないくらい顔を赤くしてこちらを睨む金子。
「お前、ほんとあざとい」
「え、あざとくなんて……」
この展開はまたアイアンクローをくらうのかと身構えると、優しく抱きしめられた。
大きな手で後頭部を支えられ、触れるだけのキスをされる。
柔らかい唇が触れ、離て、また触れる。
思わずぎゅっと目をつぶっていると、ぺちぺちと頬を叩かれた。
「ほら、また息止めてる。ちゃんと呼吸しろ、バカ」
「や、だって……」
恥ずかしくて顔を反らすと、顎をつかまえられて正面を向かされる。
「キスくらいでいちいち逃げんなコラ」
「だって、キスくらいじゃないです。もう緊張して死にそう……」
「はいはい。ちゃんとこっち向いて」
「ん……」
まるで私の緊張をほぐすように、柔らかい唇が頬に触れ、まぶたに触れ、鼻の頭に触れる。
子供の戯れのようなキスを繰り返し、時折「莉央」と甘い声色で呼ぶ。
それだけでぎゅっと心臓を握られてしまったように、身体がいうことを聞かなくなる。
背骨がぐずぐずに溶けてしまったように、自分の身体が支えていられなくて、金子の胸の中に崩れ落ちた。
「金子さん……」
頭に血が上って、脳みそ蒸発しちゃいそう。
どうしていいのかわからずに、金子のシャツをぎゅっと握りしめながら名前を呼ぶと、
「ん? 金子さん?」
と、意地悪な笑顔でこちらを見下ろす。