腹黒王子に秘密を握られました
未だに金子さんと呼び続ける私をからかうようにそう問われ、ますます顔が熱くなった。
「あ……」
「あ?」
「ああああ、あつし、さ、んんんんんnnnnnっ……!」
だ、駄目だ、やっぱり恥ずかしくて耐えられない!
敦さんって!
敦さんって……!
なにそれ、夫婦みたいじゃないの!
ほんと、無理!
恥ずかしくて無理ぃぃぃぃ!
「ほんと面白いな、お前」
やっぱり上手に名前を呼べなくて、恥ずかしさのあまり床を転げまわっている私を見て、金子がからかうように笑う。
「なんかもう、すいません……」
こんな自分がいたたまれなくて、両手で顔を覆ったまま謝った。
「なにが?」
「もういい歳なのに、名前呼んだりキスするたびに、こんないちいち大騒ぎして……」
めんどくさくないですか?
と、懇願するように顔を覆った指の間から金子の顔を見上げると、優しい微笑みを返された。
「別に。無理して先に進んだってしょうがねぇだろ。お前のペースに合わせるよ」
まるで子供をあやすように優しく頭を撫でられて、ほっとする。
「それに俺は好物はあとに取っておいて、ゆっくり楽しみたいタイプだし?」
人が安心した途端、意地の悪い笑みを浮かべられて思わずびくりと飛び上がったけど、その反応まで楽しむようににやりと笑われて、ほんとこの人には敵わないと思ってしまう。