腹黒王子に秘密を握られました
 

頬を赤らめた彼女が、びくんと肩を揺らす。
ぐっと手のひらを握りしめ、必死になにかをこらえるような仕草をする。
よっぽど力をこめているんだろう。細い手首が微かに震えている。
その顔をのぞきこめば、目尻が涙で濡れていた。

「……あっ」

唇から小さく声がもれる。その声に気づいた彼女が慌てて唇を引き結ぶ。
声を聞かれてしまわないように、手の甲を唇に押し付け必死に声をこらえる。
それでも瞳はまっすぐに前をみつめる。
今この瞬間の、一瞬も見逃したくない、というようないじらしい表情で、うるんだ瞳でじっとみつめる。

「あ……、やだ、うそ……っ」

もう我慢も限界なんだろう。
両手で口を覆って、イヤイヤと小さくかぶりを振る。

「ダメ……、そんな……っ!」

悲鳴のような細い声がもれる。

「あっ……!」

目を見開き、身を乗り出す。


食い入るような表情でみつめる。


じっと、真剣に、テレビを。



――そう、テレビを。


 
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