腹黒王子に秘密を握られました
同人誌を渡そうとする花乃の手にとびつき、必死で叫んだ。
「なんでよ」
なんでって、そんなの、だめに決まってる!
だって目の前にいるのは、金子敦なんだから……!!
イベントに不釣り合いなさわやかなスーツ姿の男は、取り乱す私を見下ろしてくすりと笑う。
「それにしても驚いたな。エリートの彼氏と過ごしているはずの友野さんが、こんなイベントに参加してるなんて」
そう言いながら、机の上の同人誌をぱらりとめくる。ちょうど開いたのは、抱き合う二人の男子高校生のページ。その絵を見て、金子敦はゆっくりと目を細めた。
うわぁぁぁぁ! 見ないで見ないでっ! お願いだからっ!
「な、なななな、ななっ」
「莉央、落ち着いて」
金魚のようにぱくぱく口を動かす私に、見かねた花乃が背中をさすってくれる。
ありがとう花乃。さすが私の友人。
「なんで、金子さんが、こんなところに……っ!」
花乃のおかげで少しだけ落ち着いて、なんとかそう言葉を発した。