腹黒王子に秘密を握られました
男の俺でも名前くらいは知っている、有名なブランドのコスメなんだから、もうちょっと嬉しそうな顔をしてもいいのに。
そう思いながら、今度は反対のポケットの中を探る。
「あと、これ」
まだあるのかと不思議そうに顔を上げた莉央の前に、ボールチェーンがついた小さなキーホルダーをぶら下げる。
すると、みるみる莉央の目が大きく見開いた。
「え……っ!!」
がばっとすごい勢いで身体を起こすと、俺の持っているキーホルダーを見て絶句する。
「これ……! どうして……!?」
目の前で揺れるキーホルダーと俺の顔を交互に見ながら、興奮でぷるぷると手を震わせる莉央。
さっきのボディクリームとのテンションの違いに、思わず笑いをこらえた。
「これ、地方限定のコラボキーホルダーじゃないですかっ!! 都内ではなかなか手に入らない貴重なグッズ! どうしたんですかっ!?」
ものすごい剣幕で詰め寄られ、こらえきれず吹き出した。
「あいかわらず、お前はブレねぇなぁ」
「いやだって! ほんと手に入らないんですよ!? どうしたんですか!?」
「たまたまもらった」
「たまたまって……!」
信じられない、という表情で瞬きをする莉央。
久しぶりに連絡を取った父が地方に旅行に行くと言うので、もしみつけたら買ってきてくれと頼んだなんて、恥ずかしいから教えてやらない。