腹黒王子に秘密を握られました
「いる?」
「いるに決まってるじゃないですか!!」
「じゃあやる」
震える手のひらの上に、ぽとんとキーホルダーを落とすと、感激した莉央が俺に抱きついてきた。
「もう……っ! 金子さん大好き! 愛してますっ!!」
人の首にしがみついて絶叫する莉央を、ぽんぽんと背中を叩いてなだめながら苦笑いする。
こんなアニメに夢中な彼女に呆れるどころか、この笑顔を見るためならグッズ集めを手伝ってやりたいと思うなんて、本当に俺もどうかしてる。
「愛してるなら、そろそろ続きしてもいい?」
笑いながら莉央の身体を押し倒す。
ぽかんと仰向けになった彼女の手の中から、キーホルダーをするりと抜き取った。
「これは邪魔だから、しまっておくか」
そう言いながら、ベッドのヘッドボードにある小さな引き出しの中にでも入れようと手を伸ばすと、莉央の表情が変わった。
「ま、待って……!」
慌てて叫びながら、俺の手にしがみつく。
「なんだよ。別に取らねぇって」
「そうじゃなくて! そこの引き出しはダメですーーっ!」
引き出しを開けようとする俺を、必死に阻止する莉央。
アニメのグッズもフィギュアももうさんざん見て、彼女が腐女子だということはわかってるんだから、今更隠す必要なんてないはずなのに。
そんなにムキになるほど俺に見せたくないものがあるのかと思うと、むっとした。